すみっこ(ウクライナ)で見た、聞いた、考えた

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世界はニジェールの危機を無視している

「世界はニジェールの危機を無視している」というアフリカの飢餓に関するロシヤ語BBCの記事(近日中に概要と一部訳を掲載予定)をきっかけに考え事をしていたのだが、あまりに広がりすぎて収拾がつかなくなったので、とりあえずまとまりのある部分だけ一部のせる。ちなみにこの一週間ルガンスクの友人宅へお邪魔して、伝染病(腹痛と風邪)に罹ったり、ダーチャへ行ったり、子供たちと遊んだりして本日早朝戻った次第。冬専用で冷房のない長距離列車はとにかく暑かった。

人生のもっとも原始的な「意味」を己の種を次代に残すという生物学的根拠にもとめるならば、大審問官と羊の群れの対比は最も理想的な社会構成といわねばなるまい。問題はどのような大審問官を我らの主に見立てるかということ(これこそ数千年にわたって人類が探求し続けている「神」の問題以外のなんであろうか)、そして、「食」足りたのちに我らが自分自身によって、もっとも安全な快楽であるところの妄想以外の何物をも求めないように「調教」されること(*1)、これである。こうして初めて、われらの群畜的千年王国は安泰となる。

(*1)人類が労働から解放された暁に、すべての麻薬は禁止される意義を失う。それは同時に、解禁されるだけでなくすべての人類の福音にすらなりうるだろう。人間の生活環境から労働が消滅することは、歴史(時間そのものはなくならない。なぜならそれは人間存在そのものの感性の形式的条件であるから)が消滅することと同義である。


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by exist2ok | 2005-07-31 21:12 | 雑感

ショスタコーヴィチの回想本


日本では翻訳が出版されてまだ一年ほどである「思い出の中のショスタコーヴィチ:我が父ショスタコーヴィチ」(邦題は忘れました)という本を先日発見。翻訳は本屋で一度眺めた程度で内容にはまったく目を通さなかった。日本は本が高いから買えません。原本は12グリブニャで日本円で250円くらい(これなら買える)。
まったく専門的な内容ではなく、マクシム、ガリーナと編集者アルドフの実見したショスタコーヴィチの思い出とそれに関する関係者の著作や言葉が抜粋された形。最後あたりには、我らがキリール・ペトローヴィチの言葉も引用されている。
戦争中の疎開の話から始まるが、今読んでいる子供時代はマクシムのいたずらの話ばかり。でも、この身近さが新鮮。これからどんなショスタコーヴィチが見えるのかが楽しみ。

ベッドに寝そべって辞書を片手に音楽をかけながら読む時間は心地よい。四重奏曲をかけることが多い。ボロディン・カルテットの弦楽四重奏曲全集(新盤)でとくにきくのは3番の入った一枚。リヒテルとのピアノ五重奏曲も大好き。逆に手が伸びないのは初期と後期の一枚づつ。後期の十四、十五番はまだ自分には敷居が高い気がする。

ぼくはいわゆる通俗名曲というのは嫌いで交響曲も第五番(これを「革命」と呼んでいる日本人にはもうショスタコーヴィチを聞かないで欲しい。八番をスターリングラードと呼ぶくらいおかしい)や十番、四重奏曲の八番(室内交響曲も)はあまり好きではない。なのに、交響曲の七番が大好きだったりと我ながら天邪鬼なのか単純なのかわからない。因みに、交響曲では七、八、九、十一、十三は最高位に属する曲。芸術的完成度と僕に与える感動が高度な地点で平衡しているので。

いま思い出したが、ヴラジーミル・マシュコーフの「パパ」という映画にはショスタコーヴィチの曲が使われている。ヴァイオリンの才能を持った主人公と守銭奴の父(言葉が聞き取れず何をやってるのか不明)との物語。なぜか交響曲第五番第四楽章をヴァイオリン・コンチェルトでというぶっ飛びモノの演奏(しかも途中でおしまい)が聞ける。室内交響曲のスケルツォも出てくる。
ちなみに、主人公の名前がダヴィットというのはわかる人にはわかるというか、ニヤリとさせますね。

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by exist2ok | 2005-07-20 22:17 | 読書

「アメリ」について再び

ロシヤ・ウクライナは海賊版天国である。詳しいことはわからないが、ウクライナに至っては国際条約にも加盟していないので、なんと著作権が存在しない(らしい)。
ロシヤ語吹き替えのMPEG4ビデオCDがそこらにあふれている。値段はひとつ当たり大体20グリブニャ前後(およそ4~500円)。DVDだと55グリブニャくらい。やはり値段もそこまで行くと、本当に海賊版なのか怪しい気がする。ひょっとしたらちゃんと権利料を払っているのかもしれない(先日買ったロシヤ語版ウィンドウズMEとオフィスXPその他数々のアプリケーションが入ったCDは17グリブニャだっただけに正規版とは思えない)。
つい先日、ビデオCDで「アメリ」を見つけたので、再び見た次第である。これはかなり好きな映画なので、一言書いておきたい(まだの方は、ぜひ見てください)。

どこかでこの映画にセックス描写があることを非難している文章を読んだがそんなことを言うのは迂遠な気がする。だってこの映画のテーマは一言で要約すれば「人間関係」になるだろうから。外界と隔絶された家庭で育った少女が自分の殻を破ろうとする話であり、まあ、その過程がかなり奇抜でコメディーになっている(*1)。
言うまでもなく、セックスはきわめて重要なコミュニケーション手段の一つだ(*2)。サルに「ボノボ」という種類があるが、かれらは生殖のためだけではない交尾をする。喧嘩しそうになったり、精神的に不安定になりそうになるとちょこっと交尾して関係や状態を修正するのである(これが乱交であることも興味深い点である)。

*1: 宣伝文句にあるように「みんなを幸せにするため」というのは留保したい。八百屋のコリニョン氏を懲らしめることは、アメリの内面において「みんなを幸せにすること」と同一に捉えられていると思われるから。である以上、「幸せ」という範疇でくくることはできない。

*2: 売春は男の本能のはけ口としてコミュニケーションの意味を薄められた商品だと思うが、僕自身は女を買ったことがないのでなんとも言えない。ひょっとしたらファッションヘルスやイメクラはコミュニケーションがあるのかもしれないが、その有無や質についても不明。

セックスというだけで目くじらを立てるような人は、どこかおかしな固定観念があるか、コミュニケーションがうまく出来ない人なのではないかと思う。正直に言えば、僕もコミュニケーションに不自由を感じる人間だが、少しは関係あると思っている。性に鷹揚な人はだいたい性格が少々いい加減だが面白く、しかも場の雰囲気をつかむのがうまい人が多い。
経験が少ない時分、往々にして初めての女性とのセックスがうまくいかないのは、リラックスできていないからだ。相手に対して自分を演じなければならないという警戒心が緊張につながり、その結果なえてしまう。これは会話の技術と共通する部分が多い。会話を楽しむ技術とセックスを楽しむ技術はほとんど同根だと僕は思っている。

映画「アメリ」の話に戻ると、はじめ彼女の紹介の「試してみたけどだめだった」という部分はこれまでの彼女の対人関係をも象徴しているから決して欠かせないのである。物語の最後で対面するなりセックスとなってしまうこともこの話の主題がこの少女の対人関係の改善にあることの象徴として(犬の嗅ぎ合いみたいなキスも同様に象徴的だ)十分納得できる。「ファンタジーにまで性描写を持ち込むフランス映画」と迂闊に言っては駄目なのである。そういうことは一個人の潔癖症や偏見で容易に指摘することが出来るが、なんらの衒いなくセックスを日常生活(セックスはまさしく僕らの生活ではないだろうか?)の一部として(*2)描ける精神を培っているのは百年やそこらの精神的営みではない。デカルトの国は「方法序説」を読む人々を必要としない、なぜならデカルトと同じように生きる人びとによって支えられているから、という言葉があるが誇張でもなんでもないことが映画一つをとってもわかる。
この映画のジャンルはファンタスティック・コメディーであるが、内的論理も何もなくいきなり純然たる空想だけが一人歩きして恣意的な妄想が膨らんでいく日本映画のファンタジーとはレベルが違う。それは登場人物の断面が実に簡潔かつ具体的に描写されているから、そこから生々しい生活が予想される。目線や言葉、ちょっとした反応一つが個性的でその人の人生が覗ける。そういうことをおろそかにしない。いうならば、空想に遊離していかない地に足の着いたファンタジーといえる(おそらく、フランスの義務教育で課せられる哲学の学習がこういう強靭な思考の足腰を作り上げていると思われる)。
空想と現実との摩擦をダウン症の青年を通して描いた映画「八日目」もその一例として挙げることができるだろう。この話では青年は食べるとアレルギーになるチョコレートを頬張って投身自殺する。だが、彼との接触を通してワーカホリックだった男性は人間的に再生する。障害を抱えて現実を放棄する青年は空想を追及するためには死ななければならないが、それは一粒の麦なのである。


*2: あくまで「一部として」。日本で過剰に発展しているポルノとは何の関係もないことを付け加えておく。ちなみにポルノ・メディアの氾濫は日本人の枝葉末節に偏向しやすい精神的歪みを象徴している。


すみっこ(ウクライナ)で見た、聞いた、考えた
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by exist2ok | 2005-07-11 20:27 | 雑感



メキシコ、N.Y. L.A.そして現在はウクライナのハリコフ市に住むおがわがお伝えします。コメント・TB大歓迎です。どんどん絡んでくださいね。
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